こつこつ書いていたはずがこの時期に。大変お待たせしました。
今回は自動車運送事業者(モノやヒトを運ぶ会社)において必置資格である運行管理者について解説していきます。
- 運行管理者って何?
みなさん車を運転するときに気をつけていることは何ですか?もちろん安全運転ですよね。自動車運送事業者は一般の方よりも安全に気をつけなければなりません。トラックのように大きい車やバスやタクシーのようにお客さんを乗せて運転しているので、一度事故があるとその重大さは一般車とは比べ物にならないことになります。そのため会社として乗務員の安全を管理しなければなりません。その責任者が運行管理者なのです。会社が保有する車両の台数によって必要な運行管理者の人数が変わりますがどの会社においても必ず必要なものです。
- 運行管理者は実際に何をするの?
運行管理者の仕事は安全の確保を行うことです。具体的に言うと、点呼の実施と運行計画の作成があげられます。その他健康診断の実施や安全教育などがありますが先の二つが最も重要な仕事ではないかと思っています。
運送業における点呼とは乗務員(ドライバー)が健康な状態で仕事に向かえるか、仕事から戻ってきたかを確認する行為を指します。寝不足やアルコールといった身体的な異常、勤務時間外等に起因するストレスなど安全運転に支障をきたす要因を顔色や声色から見抜き運転(勤務)させるか判断する能力が求められます。知識はもちろん、普段から乗務員と積極的なコミュニケーションをしていないと務まらない役割ですね。
運行計画表とはその日その乗務員がどのような仕事を行うのか書かれているものです。ダイヤや指示書などと呼ばれる場合もあります。バスや中長距離運行を行うトラックは通る道路や休憩場所なども記載されています。法令で定められた基準に合致した安全運行を作り出す仕事です。タクシーなどは勤務日数など過労運転になっていないか調整を行います。こちらでは道路の混雑状況や所要時間の概算など自身の経験やデータから無理のない運行計画か判断する能力が必要ですね。
- 運行管理者になるには?
運送事業には欠かせない運行管理者ですが、実際になるための手段は2つあります。
・運行管理者試験に合格する。
・一定期間の実務経験を経て、所定の要件を満たす。
上記のいずれかですが、多くの人は上段の運行管理者試験を受験して取得しているはずです。
それではそれぞれについてみてみましょう。
A:運行管理者試験
まず重要なこととして運行管理者資格には貨物と旅客で分かれていることです。そのため双方の資格を取りたい場合は試験を2回受験しなければならないのです。
受験資格は補助者として実務経験1年以上、もしくは基礎講習(3日間)の受講のいずれかを満たした人です。多くのひとは基礎講習の受講で資格を満たしています。
試験範囲は大雑把に
- 運送法(貨物運送法)について
- 車両法について
- 道路交通法について
- 労働基準法について
- その他業務に関する内容について
の5種30問で6割以上の正答率(それぞれ1問、5は2問正解していること)で合格できます。合格率は40%を下回るぐらいですが基礎講習をきちんと受けた人ならそこまで難しくはないはずです。問題数が少ない車両法、運転免許を取得してから久しく詳細があやふやになっている道交法、そして業務と関係の薄い労働基準法あたりが受験者を苦しめているのではないかと考えられます。最近はCBT方式というコンピューターでの試験に代わり、受験方法に戸惑うこともあるかもしれません。
とはいえ運送法や実務に関する内容は管理者にならなくても乗務員として気を付けることが理解できるので運送事業者に勤めていて余裕がある人は受験をお勧めします。
B 一定期間の実務経験を経て、所定の要件を満たす
運行管理補助者の経験が5年以上あり、講習を5回(1年につき最大1回)受講した場合に届出を出すことで運行管理者になれます。この運行管理補助者というのは受験資格にもあった基礎講習を受講した人を企業が選任・届出を行うもので、全点呼の3分の2までを行うことができる人です。よっぽど人員に余裕のある企業でなければ5年も補助者続けさせることはないのかもしれません。(乗務員も内勤者も人手不足の時代ですからね。)また5年もあれば実務経験も活かせるため試験に合格すると思いますし、そこまで不合格が続くと運行管理者として安全を担保できるか怪しくなり配置転換されてしまうかもしれません。
- 運行管理者になれたら?
無事資格に合格出来たら、会社に選任してもらいましょう。選任されることによって運行管理者となります。(選任されなくても資格は一生ものです。)その後は2年に1度の一般講習の受講が義務付けられています。また大きな事故があった場合で点呼等運行管理者に責任があると認められると刑事罰等に問われる場合もあります。それだけ運送事業の安全に責任がありますし、実際に運行管理者として働いている方は安全意識がしっかりしています。もしも売上第一みたいな考えの運行管理者がいる場合は少し身の振り方について考える必要があります。全国区のニュース事案の可能性が比較的高いですからね。
- 運行管理者資格って取るべき資格なの?
運送事業者に勤めている人、勤めようと考えている人は取得した方がいい資格です。特にドライバーをやっている人は身体(腰)を壊してしまったときのためにもおすすめします。自分が安全に運転するため、所属している会社がどれだけ安全運行を大事にしているか把握するためにいいと思っています。長く、安定して働き続ける判断材料になるはずです。
自動点呼機械の導入などで要らなくなるといった声も耳にした方もいるかと思いますが、運転するのは人ですし、全て機械任せにした方が安全というわけでもありません。自動運転が進んで交通事故が減少しても、車内事故が減少するとは限りません。運送事業において乗務員が必要であるうちは運行管理者も必要ではないかと思っています。
もしも興味が湧いた場合は早めに受験することをおすすめします。新しく学ぶのは大変ですし、道路交通法の知識は運転免許取得時から近ければ近いほど有利です。一から勉強すると覚える量に驚くことになります。
資格マニアの人は受験資格が面倒かと思いますが合格率よりかは取得しやすいはずです。
- さいごに
クルマを使う仕事はなくてはならない仕事である一方で、道路を使う仕事でもあることから危険と隣り合わせの仕事です。その中で安全を担保するのが運行管理者の仕事です。
是非興味のある方は目指してみてはいかがでしょうか?

運行管理者試験について(毎年3月・8月です)
基礎講習について(様々な会社が行っています)
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